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IT化経営羅針盤243 ハノーバーメッセの会場で考えた EUのDPPの「その先」

2025.04.22

前回もハノーバーメッセ2025で得た情報の考察をしましたが、その続きです。それは、EUが現在進めているDPPに関連します。DPP(Digital Product Passport)は、製品の原材料や製造過程におけるカーボンフットプリント情報やサービス関連情報などを含む、製品をEU域内で流通・循環させるための情報公開制度です。まずはバッテリー製品から導入が始まり、2030年までにすべての製品に対して実装が義務付けられる予定です。

今回のメッセでは、独SAP社がその基幹システムの機能の一つとしてDPPを実装し、デモしていました。その実装方法は極めてシンプルで、製品出荷時にQRコードを発行。これをスキャンして読むことで、これらの情報にアクセスできる、というものです。

DPPはサーキュラーエコノミーの実現の為のファクターという位置づけで、これに対応するための企業負担を考えると、少しインセンティブに欠けると感じられます。サーキュラーエコノミーは大切ではありますが、直接的に企業の成長に直結しにくい印象だからです。DPPのデータを公開するためには、メーカー企業は様々な情報がデジタルで管理されていなくてはならず、かつ、そのデータを集約して公開するためには、それなりのソフトウェア投資が必要です。この投資を「サーキュラーエコノミー」という文脈の中だけで捉えてしまうと、費用対効果の面で二の足を踏みそうです。

ただ、私はこのデモを見た時に、「考え方の転換によっては企業成長に直接的に貢献できる」と考えました。つまり、製品の情報を適切に公開することによって、顧客企業のメリットに繋げることができるからです。

例えば、消耗部分がある製品の場合、そのライフをデータとして提供することでユーザー企業がプロアクティブに保守を計画することが可能となります。また、保守だけではなく、とかくわかりにくさが拭えない「製品寿命」についても、きちんと定義できる可能性もあります。さらに、関連する商品の情報を紐付けることができれば、クロスセルやアップセルにつなげることも考えられそうです。要するに、ユーザー企業の成功(カスタマーサクセス)を支えるためのデータが提供できる可能性がある、と考えたのです。

こう考えると、俄然DPP対応に積極的に取り組み、そのデータの流通について真剣に努力をするべきだと思うに至る訳です。 DPPについては、日本でも類似制度の検討が始まっています。しかし、日本独自のものを導入したとしても、市場規模を考えるとあまりメリットが大きいとは思えません。本当は米国を含めてグローバルで規格が定まり、統一のフォーマットやプラットフォームでデータを流通させるべきです。議論の方向性がそうなることを見越しつつ、自社の商品やサービスの戦略を見直し、DPPのデータがきちんと提供できるように投資を進めるのが、企業に求められる現在のデジタル化の方向性だろう、と強く思いました。

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