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IT化経営羅針盤238 スマートグラスがもの作りを変える時

2025.02.11

前回のコラムで、ラスベガスで年頭に開催されたテックショー「CES」のざっくりした概要を述べましたが、今回も引き続きその話題です。前回コラムでも、私は「ARグラス」に注目していろいろとみてきました。「ARグラス」を全体でぼやっと捉えてしまうと、どんな価値があるのか、特に産業用途で考えた時にARグラスの価値はあるのか、という点において、わかりにくくなるばかりなので、少し整理するところから解説を始めます。

そもそもARグラスとは何か?VRゴーグルとの違いは?

ARグラスは、その名の通り、Augmented Reality(日本語で拡張現実)を実現するためのめがね型デバイスです。それに対してVRはVirtual Reality(仮想現実)で、めがね型ではなくゴーグル型のデバイスになります。簡単に言えば、VRが「視界全体を仮想的なデジタル空間が覆うもの」で、ARが「現実の様子にコンテンツが浮き上がるもの」と説明すればご理解頂けるかと思います。

ゲームやエンターテインメントの世界では、VRもARもいろいろと進化を遂げているのですが、産業用途はどうでしょうか?VRは、完全に視界を覆うので、主に複雑な機械設計分野などで三次元図面を目で見て確認したいときなどに使われています。3次元の世界に人間の視点を入れて目視できるので、想定していなかった不具合などを発見できますし、それを実際に作った際に、使い勝手が良い悪い、手が届く届かないなど、きめ細かい設計レビューも可能になりますので都合が良いというわけです。これと同類で、家を新築したり大きなリフォームをしたりする際に、間取りの確認などで客にVRゴーグルを使ってもらって確認してもらう、というサービスを展開しているところもあります。いずれにせよ、目には擬似的な視界情報だけが入ってくるコンテンツですので、実際の世界の姿は見えません。「没入する」という表現をしても良いと思います。

これに対してARグラスは「めがねのようにかけるデバイス」です。従って視界全部を覆うわけではありません。これにはいくつも種類があるので、整理が必要です。

エンターテインメント用のARグラス
空中にディスプレイが浮かんで見える様になっており、そこで映画を楽しむといった用途で主に使われています。映像の向こう側が透過して見えるものもありますが、どちらにしてもディスプレイを表示する用途なので、表示をすれば視界を妨げます。それゆえに、特に危険作業などを伴う仕事への応用はためらいがちになります。

非エンターテインメント用のARグラス
適当な呼び名が無いので、長ったらしい名前になってしまいますが、この種類のARグラスは、空中に文字や記号が浮かび上がって見えるものです。従ってこれらの文字などを表示していない場合は単なる透明なガラスになります。表示されるデータは、視界の上半分に表示されます。技術的な表示方式は光伝導方式と投影方式に分かれますが、投影方式はガラス面に何も細工しませんので、ガラスは完全に透明です。光伝導方式については、ガラスに処理が施されるので、若干それらしいものが見えますが、何も表示していない時には基本的に透明です。理由は後述しますが、私はこの種類のARグラスがものづくりの現場に改革を起こすのではないかと考えています。

ARグラスはものづくり現場を変えるかもしれない

VRゴーグルはARグラスよりも前に製品化されました。その際、「これによってものづくりが変わるかもしれない」と言われた時期もありますが、実際には視界を100%遮るので、現場ではなく設計などの座って使える分野への応用にとどまっています。また、少なからぬ重量がありますので、長時間着用することはほぼ不可能です。私も1つ持っていますが、10分もすると首が痛くなり、20分もすると頭痛がしてくるので、これを長時間着用しなければならない仕事を社員に強要することはできそうにありません。

ところがARグラスは違います。普通のめがねに比べると若干重いことは事実ですが、視界を遮るものが必要最低限なので、ほぼ疲れ知らずです。もともとめがねをかけている人には、視度がついたレンズを作らなければならない、という制限は付きます(注意:めがねの上からかけるものもあるので、一概にそうとも言えません)が、社員に対する健康面でのストレスは最低限だと思います。そのグラスの中に、例えば、
作業手順・組み立て手順
検査すべきこと
指示
などを表示できるようにすると、両手の自由が効く状態で頭脳はデータを受け取れることになります。文字や数字の後ろは確かに見えにくくなりますが、それでも工夫の余地は十分にあります。また、スピーカーやマイクを仕込んだ製品もありますので、必要に応じて会話も可能になります。また、カメラが仕込まれた製品もありますので、場合によっては写真や動画を使って指示を仰ぐといった使い方もできるでしょう。

ここまで来ると、「広い工場の中を、指示書の束を持ってうろうろ・・・」という現場がある会社には、比較的親和性の高いデジタル化ソリューションになり得るポテンシャルがあると言っても過言ではありません。部品ピッキング業務であっても、カメラ付きのARグラスを使い、商品の名前や型番・棚番はグラスに表示され、グラスについたカメラを使ってバーコードを読んで確認する、という使い方もできるので、従来のピッキング端末よりも(両手が自由な分)利便性が圧倒的に向上します。

ただし・・・実用化にはもう少し時間が必要

このように、ARグラス(の一部の製品)は、ものづくり現場に革命をもたらす可能性がありますし、従来難しいと言われていた現場への導入もできる可能性もあります。ただ、残念ながら「今すぐ」ではありません。ARグラスの決定打が現時点で出そろっていないことと、AIの機能についても試行錯誤が始まった段階ですので、会社のニーズにぴったりとあったものをドンピシャで提案してくれるところは、今日この原稿を書いている時点(2025年2月現在)では見当たりません。もうあと1~2年必要と思われるのが残念なところで、もう少し「おあずけ」状態です。

しかし、本当に近い将来、成功事例と共にしっかりと用途が提案され、ソフトウェアと組み合わされた商品が出てくると思いますので、注意して見守る必要があると思います。
(注意:ただし、翻訳やナビゲーションなどの機能を持った準業務用途のARグラスは、今年が普及元年になると思います)


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