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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤234 ひとり情シスは技術者のままで良いのか?
2024.12.25
「ひとり情シス」の話題を続けます。前回はセキュリティを突破口として会社の中でのプレゼンスを上げる、という話を展開しましたが、今回はその真逆。内容があまりに朝令暮改なので叱られそうではありますが、ひとり情シスの長いキャリアとして考えるべきことですので、一つご容赦ください。
「ひとり情シスは必ずしも技術力を前提に採用する必要は無い」と、ことあるごとに経営層の皆さんには話をしています。この理由は、まとめると以下のようなものです。
その1 ひとり、二人しか雇い入れることができない中小企業にとって、技術者を採用してもその社員が自力で開発できるソフトには規模面での限界がある
その2 たとえソフトを開発できたとしても、会社の事業を支える独自の機能までを開発することはハードルが高すぎる。必然的に、小さな便利ツールをいくつか作る程度に終わってしまう可能性が高い
その3 それでもいくつかソフトを作っているうちに、その数が多くなるにつれ、作ってきたソフトのメンテナンスや機能修正をするだけで、担当者の工数を使い潰してしまい、新しいことに取りかかれなくなる
その4 作ったソフトが、作った人の頭の中にだけ設計図が入っている「属人化」の塊になりやすいため、人数を補填しても効率の良い戦力拡充にはならないばかりか、退職リスクが大きくなってしまう
これ以外にも取り上げればきりが無いのですが、自分たちで作ってゆくという小回りの良さのメリットはあるものの、それ以外のデメリットが大きすぎるわけです。
しかし、もうすでに技術者扱いの情シス担当社員がいて、その人の立場に立ってみると違う風景が見えてきます。つまり、その人たちにとってみれば、
「変化の激しいデジタル環境にキャッチアップしてゆく」
ことこそ、技術者としての醍醐味であり
「会社への貢献価値」
である
わけです。これは額面通りに捉えれば、本人にとってとても魅力的であり、やりがいも感じることでしょう。しかし、一つ問題があります。それが後者の「会社への貢献価値」です。
技術者の人にとっては、高い技術力で良いソフトウェアを早く開発することができれば、それが会社へ提供できる価値だと思うでしょう。しかしです。そのソフトウェアが完成した時に、会社にどのような作用をもたらすことになるのか明確化できない場合、これは表面上の価値と言わざるを得ません。例えば、「このソフトを作れば、生産計画を作る時間を現在の半分にできる」という見込みを立てた時、そのソフトを作る企画は社長も現場責任者も大賛成で受け入れられるはずですね。そこで意気揚々と開発に取り組み、当初予定通り完成したとしましょう。現場責任者が求めていた機能もでき、「希望していた通りのソフトができたよ。ありがとう!」となったとしましょう。めでたしめでたしですね。
さて、ここで問題なのは、「本当にその効果が上がり、経営面でどのような貢献があったのかを明確化できているか?」なのです。情シスの立場に立てば「それはユーザーである現場がちゃんと言ってくれないと…」という考えを持つと思います。しかし、ユーザーがそこまで配慮してくれることはあまりありません。「便利になったよ」の一言で片付けがちです。さらに、この「経営効果」の点が長きにわたっておざなりになっていると、ひとり情シスのその仕事は比較的短期間のうちに忘れ去られ、もしくは「現場は便利に使っているけど会社は何も良くなってないじゃん」という悲しい評価を得ることにもなります。私が見てきた会社には、そのような悲しい状態に置かれているひとり情シスの人が実に多いのです。
要するに、
ひとり情シス担当者が、技術力にものを言わせて開発するのは良いが、それが経営面でどのように貢献できるのかをきちんと経営者目線で語れなければ意味が無くなってしまう
ということなのです。
さて、今回のコラムのテーマ「ひとり情シスは技術者のままで良いのか?」に戻ります。もう答えは出ていますね。技術力志向の強い方には少し残念なことかもしれませんが、いつまでも技術者でいてはいけないのです。会社に貢献してこそ存在価値がある、と生真面目に捉えれば、技術者としてスタートした場合のひとり情シスのキャリアは、なるべく早く経営層に食い込む、もしくは経営者の片腕になること、がベターとなるのです。最新の技術を取り入れてクールなソフトをいとも簡単に開発する、という技術者冥利に尽きる仕事を続けたいのは解りますが、そればかりに傾倒していると会社にも自分にも良い結果をもたらしません。 技術者ひとり情シスの方は、技術力向上だけでなく、会社の経営課題に取り組み、それを抜本的に解決するためのシナリオを経営層とともに考え、それを実現するための技術を選び取り入れる、という考え方に切り替えていかないとキャリアが長続きしないわけです。技術者あがりの私にとって、こんなことを言うのはつまらないな、と自分でも思いますが、これが現実なのだろうと確信しています。
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