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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤23 業務効率向上目的のIT化だけではもったいない
2019.09.06
当社のコンサルティングサービスをご活用頂いている企業様の半分弱は「やむにやまれず業務効率化を目的としたITの導入を進める」企業さんですが、そのようなお客様のコンサルティングが終了する際、「これで道のり半分まで来ましたね」というと大体の社長さんは怪訝な顔をされます。これが実に解りにくく、しかも負担が大きい投資をした後の人にとってみれば聞きたくも無いことですが、非常に大きな成長に繋がるポイントなのです。
当社の門を叩かれる経営者さんの大半は、
人が足りない
あまりに非効率な仕事の仕方をやっていて、残業も多い
もっと効率化すれば、人を有効活用できるのに
といった思いをお持ちです。例えば、
理由が良くわからない不動在庫が発生する
伝票発行にものすごく時間をとられている
営業が社内仕事に時間をとられている
という「やむにやまれぬ実情」の存在です。当然、これらは早急に改善するべきことですし、その為に費用対効果が高いシステムの導入を求めるのは時代の潮流です。しかし、これらの困りゴトをよく見ると、
これらを改善しても、儲けに直結していない
ことがわかります。確かに人時効率を向上させることができれば、算数の上では固定費が下がったり生産性が上がったりして収益が改善されるはずです。しかし、当社の経験では
IT化でいくら人時生産性を上げてもお金の面で計測できる効果は非常に少ない
のが現実です。例えば、「スタッフの業務を2割効率化する」という目標でシステムを刷新し、当初の予定通りの機能が実現できても残業が減らない、という状況が簡単に発生します。もちろん当社のコンサルティングでは、そんな状態になることをさけるため、KGIやKPIを限界まで具体化し、プロジェクトを通して管理するのですが、いくら目標通りの効果を上げても全体の収益に対する影響は微々たるものに留まることが多いのが実際のところです。それ故に冒頭申し上げた通り「企業の成長という意味では道半ばですね」ということになるのです。
では、道のりの後半とはいったいどのようなモノなのでしょうか?私は、
商品やサービスがデジタルの言葉でお客様と会話を始める
ことが、真に成長を実現するIT化だと考えています。最近この考え方を「DX化」という非常にざっくりした表現で説明する傾向が世の中にありますが、私は「御社の商品やサービスが御社の営業マンに成り代わってお客様と継続的な会話を始められたら、その時に御社はデジタル化によって大きく成長するようになったと思って下さい」と説明しています。
ここまで書くと、多くの方々の脳裏には?がいくつも浮かぶと思いますが、概念を理解できればかなり簡単なことです。例えば、工作機械を製造販売している会社の場合だと、以下のような状態ができた際に「商品が御社の営業マン」になったと言えます。
定期交換部品の交換時期が近くなった時にお客様にその様につぶやく。しかも事前に!(これが大切です)
機械の稼働状況に季節変動がある場合、お客様に「機械稼働のムラがある。XX社に相談して改善を考えた方が良い」とつぶやく
「同じ加工条件での使用が非常に多い。汎用工作機械ではなく専用化を検討した方が良い」とつぶやく
等々です。機械がこんなメッセージを出したらお客様はどんな印象を持たれるでしょうか?「邪魔なだけ」という人もいると思いますが、機械が発するアドバイスがある程度当たっているのであれば「自分達のビジネスが伸びる様に機械が協力してくれている」と思われると思います。この時にはじめて「後半の道のり、つまり、デジタル化による企業成長段階」が始まるのです。
こんな話をすると、「AI(人工知能)の導入ですか?いやいや、当社はそんなものを使いこなすことはできませんよ」と思われるかもしれません。しかし、私は「機械が完全自動でお客様につぶやくようにしましょう」とは言っていません。機械は単純に情報の収集とアドバイスの表示機能だけ持っていれば良く、その中身を考えるのは社員で良いのです。機械から必要な情報を収集でき、それを社内に持ってくる通信手段さえあれば、それを分析して必要なアクションを決める、といったソフトウェアは最近大きな進歩を遂げており、しかも非常に安価なものもあるのです。当然AIが使えればベストであることは事実ですが、中小企業が使うにはまだちょっとだけ早すぎるかもしれません。しかし、AI以外のITツールはたくさんあり、便利で安価なものを組み合わせれば、御社の商品もお客様とコミュニケーションが取れるようになるかもしれないのです。
いかがでしょうか? 自社商品が営業マンの助手 になれば、大きな成長に直結するのは明確ですね。業務のIT化の壁の向こう側には、真に成長に貢献するIT施策が待っているのです。業務効率化だけでIT化を終わらせるのは実にもったいない。この考え方がDX時代と呼ばれる現代に必要なことだと思います。「当社にはそんなもの要らないよ」と決めつけず、是非「商品がお客様としゃべりだす」姿を想像していただきたいと思います。
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