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IT化経営羅針盤222 システム導入プロジェクトに待ち構える怖いワナ

2024.08.06

人々を脅かしては、心を負のスパイラルに陥れ、それを糧にして利を得ようとする。残念ながらいつの時代にも、そのような負のエネルギーを身にまとった人たちがいることは事実です。特に当社のようなコンサルティング事業を展開していると、同業他社の中にはそのような売り方をしている人たちが一定数いることも事実で、私はあまり好意的な印象を持てません。少なくともそのような人たちと同類に思われたくないので、同じような論調で話を展開することは好まないのですが、今回のネタばかりは仕方ありません。皆さんをある程度脅すことになることをご容赦ください。今回のお題は「導入するシステムを決めたあとのプロジェクト推進」に関わる問題事です。

ある飲食チェーン店の会社が、全店社員の労務管理ソフトの導入を決めました。規模的には地域中堅企業と言えるその会社の社長から、こんな相談を受けたことがあります。「ソフトの導入も決めましたし、どのようなプロジェクト活動を進めるか、その日程や内容についての計画を示されました。私の役割はこれで終わりで、あとは社員に任せようと思っていますが、問題無いですよね?」と…。実は、そう単純に考えるのは非常に危険で、確認をおろそかにすると、のちに後悔することになりかねないのです。

確かに、残るタスクは極めて現場よりのことばかりですので、社長の役割は終わったと認識されるのは無理もありません。しかし、この段階で無条件に手を離せるのはあくまでも「小規模システムの場合」に限定されることに注意が必要です。このあたりの見極めが難しいのですが、「小規模」の範囲を超えるかどうかの物差しは、例えば関わる社員が多い、もしくはプロジェクト期間が数ヶ月に及ぶといったところでしょう。このような「小規模ではないシステム導入プロジェクト」の場合、社員も関係するタスクも比例して多めになりますので、少なからず社員に負担をかけます。この負担が適切に管理されないような場合には、当たり前の様に日程遅延が発生します。遅延を起こさないためには、当然適切な管理を必要とする訳ですが、問題はその「管理」が一般的にITベンダーに依存しがちであることです。

ここで、ITベンダーの考え方や力量による大きな違いが発生します。ソフトウェアを従業員と協働する「システム」として捉えているベンダーの場合、プロジェクトタスクの中の社員側の仕事についても十分な検討と協議を行って、社員がこなせる様に作業を調整してくれるはずです。ところが、いわゆる「ソフトハウス」系のベンダーの場合、文字通り「ソフトを作る」ことが仕事なので、社員の仕事のことはあまり考慮してくれません。日程に社員側のタスクを書いてくれていたとしても、その作業ボリュームを把握しているのはITベンダー側だけなので、社員側はよくわからないまま日程案が決められてしまうこともあります。結果的に、「ITベンダー側のタスクは終わっても、社員の作業が終わらず、日程が遅れてゆく」という事態に至ります。契約の取り決め方にも依りますが、日程の遅れは多かれ少なかれ予算規模の拡大を招き、その段階で社長の耳に入ることになります。「自分の仕事はここまでだ。あとは社員に任せよう。」と思って手を離した社長にすれば、とうてい納得のいくことではありませんね。

この、ITベンダーの考え方や力量の違いを事前に察知することはなかなか難しい問題です。なぜなら、事前に話しを聞いてみても大体の場合は「当社はシステム化を実現する会社ですから、当然全体を管理しますよ」と答えてくるだけだからです。どんな会社も自分たちの仕事を矮小化して「ソフトを開発するだけなので、ほかのことは知りません」とは言いません。そこのところは正直に話しをしてもらいたいものだと、常々思っているのですが、ソフト開発のみよりもシステム導入の方が付加価値を高くできる(=価格を上げられる)ので仕方ありませんね。

では、どうすれば見極めできるのか?ですが、一つだけ簡単な方法があります。それは、システム導入プロジェクトの日程計画に、社員のタスクがきちんと割り当てられているかどうかを確認すること、です。そして、その計画案を事前に説明し、社員の人名をその計画に書き込むように協議してくれているか、です。最低限、これがきちんと明確化されていれば、少なくとも導入者側の仕事の存在を認識してくれているので、それらも含めて管理しようとしている姿勢であることがわかります。 この件については、ITベンダーの数だけやり方が異なるので、なかなか見極めが難しいのですが、少しでも「社員のタスクを管理していない」と感じるようであれば、納得のいくまでITベンダーと事前協議をするべきでしょう。少なくともそこまでは社長の仕事、と言えます。

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