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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤216 AIがもたらす製造業の未来
2024.06.04
今年のハノーバーメッセでは、昨年のHannoverMesse2023の時の「生成AIフィーバー」に比べて、地に足が付いたAIの活用事例が出始めたことがトレンドだと感じました。その中でも「これは時代が変わるな」と強く感じた展示が「AIによるロボットのティーチング」です。
中小企業でも、産業ロボットが数多く使われている時代です。特に外観検査や小物の部品搬送では、比較的簡単に大きな合理化効果をもたらすことができることもあるので、多くの会社で採用されています。近年では様々な公的補助が充実しているので、補助金を使ってロボットを導入した会社も多いことでしょう。
そのロボットを効果的に使ってゆくための最初にして最大のハードルが「ティーチング」であることは、導入した会社であれば身にしみて感じていると思います。ロボットの動作を正確に間違いなく「教えて」あげないと、ロボットはきちんと動作しません。これをティーチングと呼びます。一種のプログラミングと言っても良いですね。やっかいなのが、このティーチングを行うためのスキルを社員が学習せねばならず、どうしてもそのスキルが特定の社員に属人化してしまう、という不都合な事実です。
生産性を支える柱であるロボットの動かし方を一部の社員のみが握ってしまう様では、事業の継続性の面で問題が多いですし、効率よくロボットを動かせるように日々改善を繰り返してゆくこともままなりません。導入しようとした企業の中には、このような社員を育成することができずロボット化を断念したところもあるでしょう。この意味では、産業ロボットは構造的な欠点を抱えてきたとも言えると思います。
そこへ生成AIが登場し、その応用として自然言語(人間が会話に使う言語)でロボットのティーチングまでしてしまう技術が急速に開発されてきたのです。これはまさに激変といえるもので、今回のハノーバーメッセでも複数の会社がロボットを実際に動かしていました。ロボットのティーチングの実際は、例えばモノの形状で分類する作業を「四角のものを指定エリア内に運べ」といった、極めて普通の自然言語で定義が可能です(注:デモは英語でした)。それをベースに生成AIががティーチング用データを自動生成してくれるので、それをテストし、必要に応じて細かな修正を行う、という流れとなるのです。
現段階ではテストをした後の動作の最適化は人間の手に依存するため、知識ゼロでロボットを動かすところまではカバーしきれていませんが、これも時間の問題でしょう。少し前までは動かすための勉強が必要だった仕事が、その勉強無しにできるようになるのであれば、これは「ハイテクの民主化」といっても言い過ぎではないと思いますし、いままで「当社には無理だ」と決めつけていたことが一夜にして実現可能になってしまう、ということと近いと思います。
ただしその恩恵を得るためには、
最先端の技術を把握できる様に高いアンテナを上げ続け
自社のイノベーションに使えそうなものをみつけたら、積極的に採用する
という企業姿勢が必要です。生成AIについては、まだまだ出始めたばかりの技術ですので、今後急速に企業への応用技術が発展してゆくはずです。「一秒たりとも目を離せない」と言っても過言ではないでしょう。注意深くトレンドを見守る必要があります。
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