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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤171 組織変更・人事異動とデジタル化プロジェクトの相容れない相関関係
2023.02.27
春が近づくと、社員数が多い会社の場合は組織変更や人事異動の話が増えてきます。当社のお客様の中にも例年そのような会社がいくつかあり、社内に発表される前後にご連絡をいただくことがあります。社長がデジタル化のトップを担っている場合には、人事異動はあまり大きな影響を与えませんが、担当取締役や部長級にデジタル化プロジェクトを任せきっているケースでは、それらの方の異動は時と場合によっては破壊的な影響力を持つことがあります。
なぜなら、業務の可視化やデジタル化の優先順位決定など様々なプロジェクト活動を推進してきたチームにとっては、その中の一部の人、特にリーダー的存在の人がプロジェクトの日程に無関係に変更になることが大きなストレスになるからです。
もちろん、デジタル化が十分進み、一段落ついた時点であれば多少の人事異動で影響を受けることはあまりありません。しかし、方針の策定中とか、方針に基づいた施策の企画・実行段階にある場合に、プロジェクトの中核メンバーを異動させることは、大きな問題があります。多くの社長の場合は「方針は策定できたのだから多少の異動は大丈夫だろう」とお考えになる傾向があります。しかし、
方針策定と施策実施の間での人事異動はリスクが大きい
のが実情なのです。なぜなら、「デジタル化といえども、文章に細かなニュアンスまで明確化できない」からです。デジタル化方針はそれを策定する努力に比べてそれほど長ったらしい文章にはなりません。数年先にどのような姿になることを狙うのか、今後何を重視してゆくのか、などについて明確化した方針書は、補足資料を含めてもたいてい数ページ程度の書類にまとめ上げることができますし、説明も容易です。
ところが、個別の施策となると話は別です。施策の中にはたいてい個別機能が含まれます。その個別機能について、それまでプロジェクト活動を共にしてきたメンバーであれば、プロジェクト期間内に暗黙の了解が構築されています。「方針を具現化するためにこの機能が絶対に必要で、この機能を実現するソフトウェアはだいたいこんなページ構成で、こんなボタンがあり、そこにこれとこれを入力してこのボタンを押すとこうなる・・・」といった具体的なイメージが共有されていることがほとんどです。そのようなコンセンサスが形成できていないと、どうしても方針が腑に落ちないので絵に描くことが多いからです。
そのようなメンバーの一角が、全く関わっていないメンバーに置き換わった場合、もしくはプロジェクトリーダーが人事異動で入れ替わってしまった場合、当然共通のコンセンサスはできていませんから理解してもらうための説明が必要になります。これには相当手間のかかるコミュニケーションの場が必要になりますし、それが終わっても他のメンバーとは異なった見解を持つ可能性も否定できません。
その結果、最悪の場合は施策検討段階でプロジェクトが停滞する、もしくは、プロジェクトそのものが成り立たなくなってしまうことが起こりうるのです。
実際、私が見てきた会社の中にも、デジタル化プロジェクトと無関係な人事異動を実施したばかりに、プロジェクトの目的や目標すら変更されてしまい、せっかく何ヶ月も活動してきたのに全部ご破算になった、という辛苦をなめることとなったところも一つやそこらではありません。
人事異動や組織変更には様々な背景や理由がありますので、「やってはいけません」と強く申し上げることはできませんが、それでも
可能な限り「プロジェクトがメイン施策を実行に移すまでは人も体制をいじらない」
ことが基本です。「方針はできたのだから、組織を変更しても大丈夫だろう・・・」とお考えになるのはリスクが大きい、とご理解いだきたいと思います。
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