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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤155 運用視点での発想無しに「使えるシステム」は完成しない
2022.09.26
政府筋からリリースされるシステムに関するネガティブなニュースがいくつか報道されています。「運用に手間がかかる」とか「データ入力のミスが起きると利用者に不便が生じる」等、新型コロナ関連でもいくつか事例が公表されています。そのたびに「行政はいったい何をやっているのか?」とか「いくらかかったのか?税金を無駄遣いしたのではないか?」という外野からのヤジや批判が飛び交います。担当者の方は毎日胃の痛む想いでそのような報道を見聞きしているのではないかと心配してしまいます。しかしこれは何も行政システムだけで発生している問題ではなく、民間企業のシステムでもよくあるトラブルです。
「あるべき論が振りかざされる」・・・
これが、このような問題が発生する際の根本原因の中に必ず存在するワードです。システム化は何かの目的が必ずあって、それを実現するために投資して導入するのは当然です。しかしその際に、「こうしなければならない、こうでなければならない」ばかりを振りかざし、例えば・・・
データは耳を揃えて全部入力されていないといけない
入力されるデータに間違いがあってはならない(人間の間違いを許容しない)
処理のタイミングは厳格に守らねばならない
・・・
という、半ば「機械人間でないとできない」様な作業の前提条件を作って、「これを守ることを前提にソフトウェアを作る」という行為が進められてしまうと、冒頭の様な事象が発生するのです。もう少し解説すると、「システムを導入したら、その後に担当者や関係者などがどのように行動しなければならないのか?」という人間プロセス視点での設計が欠落してしまう為、冒頭の様な問題が必然的に発生するのです。しかも残念なことに、非常に優れたシステム企画屋さんであればあるほど、この様な傾向にあります。ソフトウェアの完璧性を求めるがゆえに、人間作業の完璧性も求めてしまいがちである、という訳です。
こんな発想でシステムを組み立てられてしまうと、それを操作する人間側はたまったものではありません。不眠不休でパソコンにかじりついて入力作業に追われたり、入力した情報をダブルチェックするために他の人を連れてきたり、連れてきた人が確認しやすいように、システム入力した結果を表にして見せるようにしたり・・・とにかく付帯業務が肥大化します。ここまでくると、システムを使うのではなくシステムに使われているかわいそうな人間達、という悲哀も感じますね。
このような事象を避ける為にはどうしたらよいのか?ですが、少なくともシステム企画を担当する人は「導入後の業務プロセス」を利用者に明示出来るように頑張らねばならないのです。企画担当者にとっては余分な仕事です。きちんと動作するソフトウェアを作るのがその人の責任ですから、人の動きまで設計することはできない、というのが企画担当者の本音です。しかし、
システムとは:ソフトウェアと人間が合理的に協働作業をしている状態を意味する
ので、人間の行動も設計しないとシステムとは呼べないのです。ここをはき違えてしまうと冒頭の様な問題が簡単に発生してしまうのです。
冒頭の行政システムも、短期間で良いものを作った、と確信していますが、いかんせん業務プロセスの設計が足りなかった。これは残念としか言いようがありません。
中小企業でも事情は同じです。社長ひとりが「これを入れれば合理化できるはず」と思い込んでしまい業務設計を後回しにすると、簡単に「使えないシステム」が開発されてしまうのです。日本の社会全体のデジタル化が遅れている、と言われていますが、こんな観点での検討が上手でないが故に遅れているのかもしれません。
「システムとは人とソフトウェアのオーケストレーションである」
これは私の口癖です。是非身の回りのソフトウェアの使い方や業務プロセスを見直し、オーケストラが不協和音を奏でていないか再チェック頂きたいと思います。
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