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コラム / IT化経営羅針盤
IT化経営羅針盤151 DXの喧噪と中小企業の現実のギャップ
2022.08.22
世の中、ますますDXというアルファベット二文字の単語を見かける様になりました。「流行り始めた略語」として認識してきましたが、現在まで根強く(?)残っているところを見ると、この流行言葉はなかなか廃れないのかもしれません。最近ではDXだけではなく、GX(グリーントランスフォーメーション)とかSX(サステナビリティトランスフォーメーション)などの新たなXも見られるようになり、まさに「トランスフォーメーションの世」と言える状況です。それぞれの「X」、特にDXやGXについては非常に多くの事例や考え方、企業からのニュースリリースが多く発表されており、検索をすれば迷宮に入り込む勢いです。それぞれ辛抱強く読んでいくと、「社員を再教育してシステム化組織を社内に構築」とか「アプリを内製することでスピーディにDXを推進」という趣旨の話が多くなってきています。これは、「DX推進をしようとしたが、外部ベンダーに丸投げしていてはお金も時間ももったいない」という経営層の判断によるものです。これは、あながち間違えではないことですが、世の中に間違ったメッセージを送っているように思えてなりません。つまり、「DX推進は社内だけで頑張らないといけないのだ」という極端な認識を社会に植え付けてしまうのではないか、ということです。
確かに社内にアプリを作れる人材がいて、それが組織化されていれば色々と便利だと思います。作りたいと思ったアプリが固定費だけで簡単に作れる。一見するとまさに理想的な姿です。加えて、最近ではノーコードやローコードといった、ソフトウェアをゼロから手書きする必要が無い開発ツールも普及してきており、必ずしもたたき上げのソフトウェア技術者がいなくてもアプリはできる環境が整ってきました。これらを上手に使えば、非デジタル社員であっても教育次第ではアプリが開発できる様になるかもしれません。しかし一つ不都合な事実がきちんと表面に出ていません。それは、「アプリを開発できる=DXが進む」では無いということです。いくらアプリを開発できるスキルが社員にあっても、会社の経営方針や顧客対応にデジタル化戦略を組み込んでいくこととは全く別モノです。実際、当社でも中堅のIT企業から業務のデジタル化のご相談をうけたことがあることからもそれはうかがえます。普段基幹システムを請け負いで開発したりパッケージをカスタマイズしている会社です。業務要件定義も普通にこなすことができ、多数の開発者を抱えて同時に複数の企業からの業務システム開発を受託しています。ところが自社のデジタル化は自分達だけではできない。ソフトを開発できる人は社内にいくらでもいるが、ビジネスをデジタル化することを企画する人が社内にいない、また居たとしてもその人の考えが経営思考になっているとは限らない、という愕然たる事実を如実に物語っています。
アプリの内製化…これらの情報の出所は大企業です。大企業なりに人材の再配置を進めるなかで編み出された新たな配置転換方法なのかもしれません。自社のDXの為に、まず社員のトランスフォーメーションを要求していると見えるのは、少しうがった見方かもしれませんが大企業ほどDX化の波を大きくかぶっているので少し乱暴な対処をしているのではないかとも思えます。ところが、中小企業はそのような余裕もありませんから、このような情報が世の中にあふれ始めると、DX化のモチベーションは緩やかに低下してしまいます。実際、当社のお客さまの中にもDXを完全に諦めてしまい、他の分野での競争力強化に舵を切ろうとしていた企業も存在します。それはそれで仕方無いことなのかもしれませんが、間違った情報に基づいた経営判断は絶対に避けるべきです。この風潮が広がってしまうと、日本の中小企業は更に世界から取り残されてしまいます。DX化を一見派手に進める大企業と全く何もしなくなった中小企業との間のギャップ。これをこれ以上広げてはなりません。
では中小企業はどのようにDX化にアプローチするべきか…。それは、「真の意味でのビジネス変革方法のみを社員が考える様にすること」です。決して社員が作らなければならない、などといった制限をかけるべきではなく、実現するために社外をうまく使うことも当然考えるべきです。良いアイディアさえあれば、社外にはそれを実現するための色々な技術を持っているIT企業はひしめいています。その中から自分達のアイディアを適切に実現してくれる会社やソリューションを探せば良いのです。そして、社員はデジタル化によってどんなことができるのか、その研究や検討だけをさせれば良いのです。要するに社員にはデジタル化による夢を見させる、ことです。当然その夢は社長と共有していないといけません。デジタル化の夢を社長と共有でき、夢を現実にするために具体的な企画に落とす。そこまで社内でやりきることができれば、他の技術的な作業は社外に任せれば良いのです。
大企業と同じことができないからDX化を諦める。これは絶対に広まってはいけない誤った行動であると強く思います。
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